体幹内操法による動き方の見直し(2)

スポーツ動作において、重要なことは何か? ということを考えるとき、今なら、例えばゴルフでいうと宮里藍選手とか、野球で言えばマリナーズイチロー選手や日本ハムファイターズダルビッシュ投手、ソフトバンクホークス(次期は読売巨人軍へ移籍)の杉内投手などが思い浮かぶ。

自分のことを思い出すと、運動能力テストはそこそこの数字を出せるが、スポーツではどちらかというとそれに見合う結果は得られていない。高校時代は腕立てや腹筋背筋などの基本的な筋トレの他、柔軟体操もやって身体の柔らかさには自信があったのだが、卓球も現役時代は自分が満足するレベルへ持っていくことはできなかった。けれども、体幹操法の観点からこれらを見直すと、至極当然のように思えてきた。


スポーツで活躍している人すべてではないが、やはりしなやかな動きをしている人が多く見られる。無理な力みがなく、うまく力を伝えている。うまい人からすると、「力を抜け!!」と言われるのだが、実際にそれが成功する人は少ないと思う。自分自身も卓球現役時代、力を抜いて振れ、と言われたこともあるのだが、力を抜いて振ってもどうしても威力のある球を打つことができなかった。それでまた以前のフォームに戻る始末。

社会人5年目のときに再び卓球部に所属し再開したが、とにかくまずは手先の力を抜くことを意識してやれというアドバイスをいただけた。これ自体は大変ありがたいアドバイスとなり、力を抜いて効率よく力を伝える感覚を感じることができた。これがスイングを根本的に直すきっかけとなった。


まず、身体の柔軟性がスポーツ動作において柔軟な動きにつながるか? という疑問に対しては「必ずしもそうではない」であろう。体幹操法によれば、身体操作がなめらかであるかどうかは、体幹内の関節リンクがうまくいっているかどうかで決まるため、部分的な筋肉の柔軟性がそのまま動作改善につながるとは考えがたい。
まぁ、柔軟体操もまったく無駄とは思わないが、柔らかすぎる必要もない。体幹操作の妨げにならない程度であればよいのではないか。例えば、立位体前屈でいえば、余裕を持って手先が地面につく程度ではないか。


また、筋トレにより肥大させた筋肉がスポーツ動作を改善するか? という疑問については、これも「必ずしもそうではない」であろう。もちろん筋肉が多ければパワーも増大するが、そもそも体幹操作が満足にできない状態でいくら筋肉をつけようとも、パワーをうまく伝えることができない。また、関節や骨格の自然な動きに逆らって無理矢理身体を動かしていると、どこかに負担が集中し身体を痛める可能性がある。筋トレが過ぎるとケガをする選手もいるが、それが理由だと思われる。
また、筋トレは基本的に、負荷を感じて筋肉を肥大化させるトレーニングのため、むしろ身体操作に観点から言うと、重いものを重く感じるのであるから、下手な操作が身に付いてしまう危険性もある。


これらが、スポーツの上手い人と下手な人の差になって現れてきていると思われる。順番が逆なのである。身体操作を根本的に改善し、動きの妨げになるブレーキを外していく作業が絶対に必要である。そうしないと、常に「ブレーキがかかったまま」動くことになり、非効率であるばかりか、場合によれば身体を痛めてしまう。
スポーツに才能のある人は、まずこの身体操作が巧みであると考える。その土台があって、各スポーツにおける感覚が培われていく。繊細な感覚を獲得するためにはブレーキを抱えたままの動きではいけない。筋トレによって無理矢理動かしてもいけない。たぶん、今はやりの体幹レーニング(インナーマッスルレーニング)でも、まずは身体操作操作の改善をしなければ効果は出ないと思う。(メタボリックシンドローム改善といった意味では有効かもしれないが・・・)


とすれば、実際は誰にでもスポーツが得意になる可能性がある。昔は才能だけで片付けていたが、体幹操法との出会いによりその考え方は大きく変わりつつある。自分にもできるんだという実感が湧いてきている。