音楽鑑賞に関する雑感(1)


普通、「音楽を聴く」と言われると、
部屋に閉じこもって音楽に耳を傾ける姿ではなく、
iPodなどの携帯プレーヤーで聴く人の姿を思い浮かべる人の方が多いはず。
音楽を単独で聴くことは通常はほとんどなく、
漫画を読みながら、パソコンを弄りながら、食事しながら・・・
最も音楽鑑賞に近い形であっても、映像を見ながら(映画鑑賞など)ではないでしょうか。


このように、音楽鑑賞が「ついで」「ながら」趣味みたいになっているのは、偶然ではないと思う。
つまるところ音楽だけ聴いていると、耳以外が暇なのです。単純な理由。
映画鑑賞しながら漫画を読むということはなかなか難しく、目と耳を映画に取られてしまっているから。
音楽鑑賞の場合、とりあえず漫画を読みながらでも「周辺聴覚」とはいえ、「聞こえ」ます。
英語で言うと「listening to music」でなく、「hear music」になっているということです。
(listenとhearとは「to」が付く、という点も大きく違いますが)


それだけが音楽鑑賞が「ながら」趣味に落ちぶれてしまった理由ではないと思います。
音楽を広く普及させたコンパクト・ディスク(CD)の登場、華やかな「映像文化」の台頭、・・・などなど色々あるでしょう。
特にCDは音楽を身近なものにした一方、扱いの簡単さと手軽さが逆に音楽の趣味性を損なってしまった、という面もあることを忘れてはなりません。
僕自身はアナログ・ディスクをまだシステムに導入していないので分からない部分が多いですが、
針やカートリッジ、フォノイコライザーアンプ・・・音質を変える要素は多分にあります。
昔は音楽を聴こうとすると、自然とハード面で苦労するという事情があったので、レコード鑑賞はあまり手軽なものではなかった。
それゆえレコードに対して特別な思いを抱くことができたのでしょう。
同じような思いを現代のCDに対して抱けるか? と言われると、僕はまあそれなりに思い入れはあるというでしょうが、
パッケージメディアを経ずに直接HDDに録音して聴いている人に、そんな思いはないでしょう。
また、テレビや映画などの映像娯楽が幅を利かせるようになり、
刺激の少ない(?)音だけのオーディオよりも映像入りの方が娯楽としては受けがよかったのだと思う。
現代人は忙しいので、1回1回が印象に残るようなもので、手を変え品を変えあれこれと提供してくれる映画の方が楽しいのかもしれませんね。
(そしてこれは映画に限らず、多くの人が「趣味」といってはばからないものの中にも多く見受けられます)


どうも映像文化(ビジュアル)はオーディオよりも格が高いと思われているのか、
映像に拘っている人は「ビジュアルマニア」と呼ばれず、音響に拘っている人は「オーディオマニア」と蔑まれます。
前者は、プロジェクターや高級AVアンプなどで環境を整えなくても、テレビひとつに40万〜50万を使っている人は、
僕からすれば十分「ビジュアルマニア」なのですが・・・そんな呼ばれ方は聞いたことがありません。
(あ、もしかしたら「AVマニア」なんてのはあるのかもしれませんね。)
まあ、僕の感覚からするとなにも考えずただ消費娯楽的に音楽を聴いている人は、
逆にオーディオにまったく注意を払わない人なのであって、今くらいの投資をするのが「普通」の感覚ですけど。
「だからマニアなんだよ!」なんていわれそうですがね。
いや、でも蔑まれるのは納得いかないというものですが、
CDプレーヤー+スピーカー+プリアンプ+パワーアンプで総額80万円弱のシステムではそう言われても仕方ない。
いくら家庭用で40型以上のテレビを買ってもせいぜい30万程度だろうから・・・。


(つづく)