噂の高音質CDの実体験

いちおう、一通り聴いてみた。結果は、

  • Blue-spec CD:これはいい
  • SHM-CD:通常CDでよい
  • HQCD:通常CDの方がよい(ただしリマスター版はこの限りではない)

である。この結果に不満がある人はぜひコメントをいただきたい。
ただし比較に使用した音源・曲・オーディオシステムの条件は必ず記載のこと。

Blue-spec CD

ソニーSony Music Entertainment)によれば、

  • Blue Laser Diodeによりビーム品質を向上、より正確なカッティングが可能になっている
  • Blue-ray Disc用に開発された高分子ポリカーボネート採用により、より正確なピットの形成

という2つの技術により、ジッターを排除しマスターテープクォリティに近づけているという。


どうもこの「マスターテープクォリティ」という言葉が高音質CDの鍵になっているようなのだが、実際に聴いてみると、これらの素材すべてが「固有の音色」を持っていると感じる。もちろん、通常CDもそうであると思う。もし、最初からSHM-CDの素材でCDが作られていたら、当然それをリファレンスとしてプレーヤーの開発が行われていたに違いない。その意味で、僕らの耳は通常CDに慣れきっている。それと異なる音色の素材に出会ったときどういう反応を示すか? それは人それぞれであるだろうが、やはり基準となるのが通常CDであるのは間違いない。
この観点でBlue-spec CDを考えたとき、音色自身の話をすれば、奇跡的?というべきか、あるいはフォーマットリーダーとして意図的に行っているのか、通常CDと大幅な音色の違いがないのである。違うのは、質感・肌合い、あるいは音触のしなやかさである。大雑把に言うと、SACDに近い鳴り方。刺激的な音がしないので聴き疲れしない。SACDほどの開放感・空間感はないものの、音場の緻密さや余韻などはなかなかのもの。これなら通常CDの代わりになってもまったく問題ない、どころか、むしろ作れるならこちらで作って欲しい。

SHM-CD

液晶パネル用のポリカーボネートを使用したCD。反射率の向上・正確なピット形成を目的としているよう。ただ、この「反射率の向上」というものに僕は若干の疑問が残る。果たして反射率の向上が音質向上をもたらすのだろうか? 時間軸の揺らぎ(ジッター)というのは、音質へ決定的な影響を与えることは、クロック換装による効果から確認済みだが、別に反射率が向上しても読み取る記号自身は変わらないような気がするが・・・。でも実際は音が変わる。ただ、クリアな印象はあるものの、若干重心の位置が高くなる傾向があり、少しシャリシャリした音触に感じる。上質な音という印象はなく、僕のオーディオシステムでは、むしろ通常CDの方が落ち着いてクラシックを聴ける。ジャズはサンプラーを持っていないのでよくわからないが。敢えてSHM-CDを選ぶ理由は特にないというのが結論である。

HQCD

SHM-CDと同様に液晶パネル用のポリカーボネートを使用しながら、より「反射率」を高めるため反射膜に特殊合金(通常はアルミ)を使用したもの。こちらはEMIクラシックやDENONクラシックなど色々なところからサンプラーが発売されている。音色は、SHM-CDの特徴をより強くした感じである。よりシャリシャリしている。単純にHQCD版にしてしまうとまずいと考えたのか、DENONクラシックではさらにリマスターを施している。これはこれで音の構成が変わっているのでよくわからないが、聴いた印象ではリマスター版の方が癖のない音質に仕上がっていると感じる。クラシックには不向きなのでは? と思うくらいにウチのシステムでは癖が出てしまう。単純にこの素材を使ってCDの代わりとするのにはかなり抵抗がある。メーカーは再検討してもらいたいところであるが・・・どんなシステムを使って音質評価をしているのだろうか。それが気になる。

まとめ

結局冒頭の結論に至ってしまうわけだが、やっぱり通常CDとの音色差が大きいものについては、僕にとっては受け入れがたい。SACDについては素材はよくわからないが、通常CDと大幅な音色の違いはないので、自然と受け入れられていたが、こうも新素材が乱立してくると、あまり素材を無視できなくなる。今は試行錯誤の状態かもしれない。メーカーとしても、今後SHM版とかHQ版に移行していこうとしているのか方針は見えない。Blue-spec CDについては音に問題はないと思うので、コストを下げて通常CDと同じ価格であの音質を実現して欲しい。SHM-CDやHQCDは、別にどちらでもよいと思うが、もしやるのであれば必ずリマスターを行って欲しい。でないと通常CDに慣れた、耳の肥えた人たちに見捨てられるかもしれない。割と好評価を耳にするのであるが、もしかしたら僕の耳がおかしいのだろうか? まあそれもあるかもしれないが、それでも評価するシステムは非常に重要だと思う。正直、ラジカセやミニコンポでBlue-spec CDの音質差を味わえるとはいいがたい。HQCDなら違いが分かるような気がする(癖が強いので)。むしろその癖のある音が好きな人にはたまらないのかもしれないが、クラシックはもっと落ち着いていて重心の低いものの方が似合うと思うのは僕だけだろうか・・・。

何度も言うように、ジャズやポップスだとまた事情は違ってくる。要は、適材適所を行えばよいということ。別に新素材CDがすべて悪いというわけではない。でも通常CDを代替するのだけは当分待って欲しいところではある。市場によって淘汰され、結局はまた通常CDに戻ってしまうとしたら、それはそれで面白くはあるが。